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北野幸伯 『クレムリン・メソッド』 から読み解く「国益」とは何ぞや? 〔不破利晴〕

     

日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理

国際関係アナリスト・北野幸伯(きたの よしのり)

 モスクワ在住の国際関係アナリスト・北野幸伯(きたの よしのり)氏は、ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学を卒業した始めての日本人である。そして、卒業生の進路が大方二つの方向性に向かうといった意味で、この大学はいささか特殊でもある。

 半数は外交官として、残りの半数は諜報部員(旧ソ連のKGB、現在はFSB)として国家機関へと向かってゆくのだ。日本はともかく、外交官も諜報部員を兼ねるのが国際基準であるという現実を踏まえると、この大学はいわゆるインテリジェンス・オフィサーを養成するエリート校と言っていい。事実、北野氏もロシアの自治共和国の一つ、カルムイキヤ共和国で大統領顧問を務めた経歴を持つ。

 現在のロシア・ラブロフ外相もこの大学の出身であり、1996年から2003年まで在日本ロシア大使を勤め、今年の9月に来日したアレクサンドル・パノフ氏もモスクワ国際関係大学の出身だ。ちなみに、このパノフ氏はこのたびモスクワ国際関係大学・外交官学科の学長に就任したという。このことは9月25日、東京・永田町で開催された新党大地主催・東京大地塾でも触れられている。
[https://www.youtube.com/watch?v=GAH5gKgCwtI]

 北野幸伯氏は、モスクワ国際関係大学在学中に旧ソ連崩壊といった、歴史の分水嶺を現場で目の当たりにした数少ない日本人の一人でもある。現在でも、ロシア通貨ルーブルの暴落が取り沙汰されているが、当時は暴落などという生半可な言葉では形容し難いハイパーインフレが、崩壊したソ連を襲った。このため、ルーブルの価値は事実上消滅し、北野氏も一文無しになってしまったのだ。

 下宿代が払えなくなってしまった北野氏は、そのことを下宿先のおばさんに告げたところ、「あなたのことは信頼しているから、お金はできたときに払ってくれればそれでいい」と言われる。このとき北野氏は悟ったという。――「自分はお金がないためにこのような善良な人を困らせている。やはりお金は大切なのだ!」

 お金に対する厳格なまでの価値観は、北野氏の皮膚感覚からもたらされたものだ。だから、金儲けに執着することを彼は全く否定していない。世の中は金がすべてとまでは言わないが、ほぼそれに近い極めて重要なファクターだ。

 そんな北野幸伯氏からメッセージが届いたのが、12月20日。その日は彼の新刊『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理』(集英社インターナショナル)の発売日であるという。
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 北野幸伯氏の本は全て目を通している私としては、早速新刊を注文した。彼の書籍は極めて重要な国際情勢を極めて分かりやすく記されている特徴だが、今回の『クレムリン・メゾット』はそれにプラスしてより先鋭的、シャープになった印象を持った。
  野球に例えれば、日ハムの大谷投手の160キロ・ストレートが内角・外角、高め・低め、そしてど真ん中にビシバシ決まり、三球三振の山を築いているようなイメージだ。

 そして、私に関して言えば160キロ・ストレートのデッドボールを食らい、気絶したといったところだ。つまり、私はノックアウトされたのだ。
  私がどの箇所でノックアウトされたのかは追々語るにせよ、それほどまでの内容がこの本には書かれている。
 私は有権者になったばかりの若者にこそ、ぜひとも読んでいただきたい一冊だと思っている。

「国益」には二つの要素がある

 『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理』では、国益についても明確に定義付けがなされている。

 ――国益とは「金儲け」と「安全の確保」である。

 非常に生々しい話だが、意外にもこのフレーズにピンとくる日本人はそう多くはないのではなかろうか。

 例えば、私などは好き好んでサラリーマンを続けているわけではない。その理由は簡単で「未だに政治家になれないでいる」からである。そして妻子を養うために毎月の収入は確保しなければならない。つまり、現在の収入に見合うほど、他の方法が上手くいっていないから仕方なくサラリーマンをやっているのだ。他の収入源が確立すれば、無論サラリーマンは辞めることになる。つまり、どのような状況であれ金儲けは大切なのだ。

 サラリーマンを多く抱える国家も、本質的は同じような事が言える。
 モニカ・ルインスキーさんとの不倫騒動で大ひんしゅくを買ったクリントン大統領の人気が未だに高いのは、クリントン時代のITバブルの影響が非常に大きい。アメリカ人にとっては金儲けしやすかった時代であったということ。

 これはロシアのプーチン大統領にも言える。旧ソ連崩壊後、暗黒時代が永遠に続くと思われた現在のロシア。事実、旧ソ連崩壊の1991年から1998年足らずの間に、ロシアのGDPは43%も減少している。
 ところが、プーチンが首相になるやプラス成長に転換し、彼が大統領になった2000年から2008年までの間、毎年平均7%という高成長を続けるといった大逆転が実際に起きた。

 確かにプーチン大統領は独裁者だ。スキャンダルを書いたメディアを平気で潰すし、人権を侵害している面も多々見受けられる。ロシアではプーチンに睨まれたらかなりマズいことになる。

 それでもプーチンがこうして大統領でいられるのも、やはり経済的な面が大きいと言える。旧ソ連時代には有り得なかった「豊かな生活」、つまりある程度経済的に余裕のある「中間層」の出現は、プーチン大統領の成果であると言って差し支えない。だから、ロシア国内では「独裁でも、まあいいかな~」的な面があるのは確かなのだ。

 国益とは「金儲け」である。
 詳しくは『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理』(集英社インターナショナル)にぜひ目を通していただきたい。
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 そして、もう一つの要素。
 国益とは「安全の確保」であるについては、私個人的には別の章で、もう少し突っ込んで考えてみたいと思っている。

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