Read Article

 

 

NHKスペシャル 『いま 集団的自衛権を考える』 ~感想戦~ 〔不破利晴〕

     

 事前に紹介した4月12日NHKスペシャル『いま 集団的自衛権を考える』では、予想通り集団的自衛権の是非論に終始し、根本的な憲法9条との関わりについての肝心な議論は薄かったとの印象を持った。

 それでも、この番組は私個人的にはそれなりの収穫もあった。それはなんといっても「反対派」として関西大学法学部元教授・豊下楢彦(とよした ならひこ)氏が出演したからである。

 豊下氏は誹謗中傷、恫喝脅迫に晒されるのが日常となっているような方である。なぜならば、これまで「日米安保条約」「昭和天皇による敗戦後の二重外 交」、そして「尖閣諸島問題」の暗部に鋭く切り込む研究を展開し、そして書籍を世に送り出してきた人物だからだ。よって過激な右翼分子からは常にマークさ れているのだ。

 そんな事情もあり、豊下氏の書籍が新聞などの書評欄に載ることは稀だし、また他の学者と比べてもテレビのようなメディアに出演する機会も少ない。メディアは政府のバイアスが掛かっているから、それも当然だ。

 そのような中、最近信用が急降下していたNHKだが、豊下楢彦氏を出演させたことについては評価を与えても良いとすら感じた程だ。全国メディアに登場した意義は大きい。
 そんな豊下氏は言葉は丁寧冷静であるが、さすがに腹は据わっているとの印象を受けた。

 「あなた方は北朝鮮のミサイル危機を煽るが、仮に北のミサイルが無防備な日本の原発を狙ってきたらどうする。原発は稼働中であれば被害 はさらに拡大する。そんな中で原発再稼動を打ち出すのは矛盾なのではないか?その際に日本のミサイル防衛システムは役に立たないと私は考える」

 いきなり原発問題を持ち出すことは番組の趣旨とは異なるが、この辺りが豊下節なのだろう。「賛成派」は言葉をすり替えた議論で応戦するしかなかった。

 ちなみに、この番組に出演した論客6名と、私の感想を以下に紹介する。

 

集団的自衛権・賛成派

 
・礒崎陽輔(いそざき ようすけ)〔内閣総理大臣補佐官〕
 →現職の参議院議員で安倍首相の補佐官を務めている。彼は特定秘密保護法の際にもスポークスマンとして様々なメディアに登場していた。とはいえ、安倍首 相のトモダチであるには違いなく、政治家としての実力も極めて凡庸。端的に言えば政府与党の使い走りのような人物である。

・北岡伸一(きたおか しんいち)
 〔国際大学学長・安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会 座長代理〕
 →いわゆる御用学者である。それ以上でも以下でもない。ただ、弁も立ち、この手の議論には慣れているので賛成派の中心として機能していた。ただし、その言葉は非常に軽い。これが御用学者の特徴だ。

・森本 敏(もりもと さとし)〔拓殖大学教授・前防衛大臣〕
 →前防衛相でありながら、論客6名の中で最もしょうもない人物と言う他ない。民主党政権時に防衛大臣に就任したが、その論調は対米従属一色で、基盤は実 は自民党にあるのではないかと思わせる振る舞いが多々見受けられた。彼は防衛相になる前は「オスプレイ」の危険性を声高に主張し、「未亡人造成機」とまで 言い放った。ところが大臣になるや「米国は安全だと言っているので、通告通り、受け入れるしかない」と突如”手のひら返し”。天木直人氏に言わせれば、民 主党でも自民党でもどちらでも構わない、政治理念に極めて乏しい人物である。もちろん軍事評論家としても信頼が地に堕ちている。

 

集団的自衛権・反対派

 
・豊下楢彦(とよした ならひこ)〔関西学院大学元教授〕
 →前述したとおり。『日米安保の成立(岩波新書)』『昭和天皇・マッカーサー会見(岩波現代文庫)』『「尖閣問題」とは何か(岩波現代文庫)』『集団的 自衛権とは何か(岩波新書)』など、読まずにはいられない書籍が目白押しだ!この方なくして、もはや日本の安全保障は語れないのではなかろうか?

・宮﨑礼壹(みやざき れいいち)〔法政大学大学院教授・元内閣法制局長官〕
 →極めてクレバーな人物との印象を持った。内閣法制局長官をしていただけのことはあり、深い洞察と考えようとする姿勢、そして独自の眼力が内閣法制局の重要性を体現していたように思われる。ある意味、論客6名の中で最も恐ろしい人物。

・柳澤協二(やなぎさわ きょうじ)〔国際地政学研究所理事長・元内閣官房副長官補〕
 →元々は防衛官僚であり、防衛庁のカウンターパートであった人物だ。防衛庁の局長、官房長を歴任した後、2004年から2009年の間、内閣官房副長官 補として小泉首相から安倍、福田、麻生と続く4人の首相に仕えて自衛隊のイラク派遣を担当してきた。本来は「賛成派」に加わる立場であるが、彼はイラク戦 争の反省を込め『検証 官邸のイラク戦争(岩波書店)』を上梓した経緯もある。よって、彼は過去の経緯からも、反対派として登壇するのが非常に辛かったとみえる。始終涙目を浮か べていたように見えたのは私だけだろうか。

 ちなみに、集団的自衛権の限定容認論について、NHKの世論調査によれば賛成が17%、反対が33%、どちらともいえないが33%だった。

URL :
TRACKBACK URL :

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 1 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 今「集団的自衛権とは何か」を読んでいます。
    非常に理路整然とした語り口で、近代史に明るくない
    理系学生の自分でも、丁寧に読めばスーっと頭に入ってくるような本だと感じています。
    このNHKの番組、見たかったですね。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top