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今さらながらAIIB・アジアインフラ投資銀行の本質を探る 〔不破利晴〕

     

戦争には2つの方法がある

 中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立するといった大きな行動に出た時、この投資銀行にはイギリスをはじめとするヨーロッパ先進各国や新興国、総勢48カ国が創設メンバーの期限とされる3月31日までに参加を表明した。
 
 同盟国のオーストラリアや韓国が参加をしているのにも関わらず、アメリカはこれに参加ぜず、もちろん対米従属を国是とする日本もアメリカに歩調を合わせるかのように参加しなかった。
 
 麻生財務相兼副総理は、AIIBの透明性や公平性に疑義を呈していたが、そのようなことは枝葉末節であって本質的な問題ではない。
 国家の目的とは究極的には「安全保障」と「金儲け」であるとするならば、これほど多くの国が参加した理由は、何も中国を信頼しているわけでも何でもなく、「金儲け」に寄与するからである。
 
 よって、アメリカと日本はAIIBに対抗するとしたら、目下のところ俎上に上がっている、これも安全保障とサブセットになっているTPPを前面に押し出す他なく、しかし、日米間においてTPP交渉の進捗は決して順調ではなく、また、アメリカ国内でもこれまで秘密とされてきた交渉過程を議員にも公開するといった動きも出てきた。全ての議員がTPPの全貌を知ったらどうなるか。仮に日本が譲歩しても、アメリカ国内からTPPは崩壊してしまうだろう。
 
 戦争というのは2つの方法があり、一つは武力を行使して物理的に破壊と殺傷をもの。そして、もう一つは金融戦争である。つまり、このままではアメリカと日本は中国が仕掛ける金融戦争に負けてしまう可能性がある。
 
 アメリカの覇権が揺らぎ、今後の世界は多極化することが必至の状況から考えてみれば、これも当然の動きである。その意味において、やはりイギリスやフランスといった国はアメリカ以上にしたたかな国である。
 
 イギリスによるパレスチナをめぐる ”三枚舌外交” はあまりに有名だし、それによって建国されたイスラエルに「ミラージュ」といった戦闘機を売りさばいたのはフランスであった。このフランスから購入した兵器は、その後の中東戦争でイスラエルにとって大きな威力を発揮することになった。

第一次安倍内閣のときから舞台は整っていた

 日本は「外貨準備金」としてアメリカ国債を約120兆円ほど保有している。中国はさらに多く400兆円に迫る勢いだ。
 
 中国はさておいても、日本の場合、このような多額の金をアメリカ国債として保有する明確な根拠はなく、本来的には国会で承認されなければ違法である可能性すらある。しかも、日本の外貨準備金は日本が自由に運用できないことになっている。これはアメリカの圧力もさることながら、その国債自体がアメリカ連邦準備理事会の金庫に保管されているため、 ”物理的に” 運用できないようになっている。日本がアメリカの飼い犬と言われる所以である。
 
 その点、中国は違う。中国はふんだんに保有しているアメリカ国債を外交カードとして使うこともできる。中国がアメリカ国債を売り浴びせたら、アメリカは倒産するだろう。
 
 実は、中国の金融に関する下準備は第一次安倍内閣の2007年頃から着々と進められてきた。2006年頃までは日本が世界で最もアメリカ国債を所有していたが、その座を中国に明け渡したのが2007年頃であった。
 
 2007年3月、中国の財務大臣が外貨準備金を運用する新会社を設立すると発表した。つまり、世界最大規模の中国の外貨準備金を効率的に運用しようという思惑である。不動産や油田など、様々な分野に投資するだろうと世界の誰もが思った。
 
 そういったより具体的かつ現実的な表れが、今回のAIIBではないかと思われる。AIIBでは中国の「人民元」が活躍すると思われるが、これが何を意味するかは明白だ。
 現在の基軸通貨はアメリカのドルであることは誰もが知っているが、これは何も国際法などで決まっているわけではない。アメリカが覇権国家で、アメリカを凌ぐ国家がこれまで他に存在しなかったため、言わば慣例的にドルが基軸通貨になったに過ぎない。
 
 ドル以前はイギリスのポンドが基軸通貨であったが、大英帝国の没落と共に主役の座をドルに奪われた。
 
 今後、世界は多極化するのは間違いないが、中国は多極化世界でもリーダー的な存在を狙っている。経済が減速傾向にあるとはいえ、2020年後半まで中国経済は持ちこたえると言われている。その後は一人っ子政策の弊害で、中国は一気に老化する。それまでに中国は覇権を確立したいのではないか? 
 AIIBの設立は、基軸通貨をめぐるアメリカに対する宣戦布告のように思われる。

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